この間、友人の妻がテロ対策として中国当局に逮捕されるという事件があった。しかも逮捕された友人の妻は身重で、2人は新婚旅行の最中だった。友人から連絡を受けた僕は逮捕の事実をにわかには信じることはできなかった。
なぜなら友人夫婦の国籍は中国人、結婚式を上げる為に故郷の新疆へ向かう途中だった。日本人がスパイ容疑で逮捕されるニュースは時折聞くけど、ごく普通の中国人である友人がウイグルへの新婚旅行中にテロ対策で逮捕されたのは何故だろうか?
このお話は実話に基づいて書いている。友人から聞いた実話をもとに、中国という国の現状を改めて確認してみようと思う。
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仕事で中国に滞在した時、僕はホテルでNHKのニュースを見て驚いたことがある。中国の新聞が「縦読み」で共産党を批判したというニュースが流れて数秒後、僕が見ていたテレビの画面が真っ黒になったのだ。
僕は中国では体制批判などのニュースは手動でカットされるという話を思い出した。まさか自分がその現場に遭遇するとは思わなかったが。
記事を書いた記者は解雇されてその後の消息は不明だ。日本人の僕達から見れば国民の権利が存在するかどうかわからない国、それが中国なのかもしれない。
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突然の友人からの連絡「逮捕された」
「今、〇〇(地名)で公安に捕まっています」
僕のWeChatに突然こんなメッセージが届いた。WeChatとは中国版のLINEのようなもので、中国では基本的にLINEが使えないので、日本とやりとりをする時にはこれを使う。
中国でLINEが使えない理由は「13億人+海外にいる華僑の市場」を外資に渡さずに国営企業で独占するためと聞いた事がある。使い勝手はLINEより遙かに劣っているが、現状中国と日本の連絡はWeChatでやりとりをするしかない。
僕の友人は日本に住む中国人夫婦で結婚式を挙げる為に新疆ウイグル(しんきょうういぐる)に向かっている所だった。僕は何が起きたのかよく解らずに「大丈夫か?」と返信するのが精一杯だった。
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逮捕されたのは身重の新妻だった
「僕は大丈夫、でも彼女が捕まった」
友人からの返信を見て僕は青ざめた。なぜなら新婦のお腹には新しい命が宿っている事を聞いていたからだ。彼等は日本で働くごく一般的な中国人の若い夫婦だ。日本人よりも礼儀正しく、日本人よりも丁寧な日本語を話す。そんな彼等が中国の公安で逮捕される理由は僕には解らなかった。
まるでスパイ映画を見ているようだ。もしかして僕には話せない秘密があるのではないか?と、疑念を抱いてしまうほどだった。
僕の知っている中国について
僕は仕事や観光で何度か中国に行った事がある。その中で解ったのは中国の人は国に対して一線を引いているということ。平たく言えばあまり信用していないと言うことだ。
その為、経済的に余裕がある層は常に有事に備えて国を脱出する準備をしている。わざわざ海外で子供を産んで違う国籍を取らせたりするくらいだ。
僕が現地の人に聞いて驚いた価値観の違いについては教科書が教えてくれない中国を読んでほしい。実際に中国の人の考え方に触れて自分の国とは大きな違いを感じた経験談だ。
価値観の違いついでにもうひとつ、僕が忘れられない中国の料理についての記事はあなたも海外で出会うかもしれない残酷な料理を読んでほしい。
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中国テロ対策の新法が施行?
「新しい法律が施行されてたんだ…」
逮捕されたのは友人の妻で、理由は驚くべきことにテロリスト容疑だった。これは彼らの目的地、新疆ウイグルという場所に大きく由来する。
新疆ウイグルは中国国内でも複雑な歴史を持つ土地である。清朝時代に中国に支配され、今でもウイグル族を始めとする民族の独立運動が起きるし、最近でもテロ事件が起きたのは記憶に新しい。
逮捕された新妻は新疆の出身だったので、2人で実家のある街で結婚式を挙げる予定だった。そしてその旅路の途中でテロリスト容疑で逮捕されてしまったのだ。
なぜならば今年の春頃に中国当局は新疆に籍を置く国民に対して、テロ対策の為に新たな法律を施行したばかりだった。
その法律とは「5か月以上、海外に滞在する者は届け出義務を負う」という内容だったそうだ。そして届け出を怠った者に対しては「テロリストと見なし、超法規的に逮捕できる」となっていると僕は聞いた。(法律の内容は全て伝聞)
昨年、結婚してから日本で生活をしていた2人はその法律を知らなかった為、届け出を出していなかった。その為、友人の妻は中国入国時にイミグレーションで逮捕されるという事態になってしまったのだ。
拘留2日間、携帯没収・ホテルに軟禁
「僕が無関係?そんな事あるもんか!!」
テロ対策で逮捕された友人の妻は身ごもっていた為、本来は留置所に拘留されるところをホテルに軟禁される事になった。その間、携帯電話は没収され中身を全て調べられたようだった。
ちなみに旦那は新疆出身ではなかった為、逮捕はされなかった。むしろ公安に「あなたは無関係だから帰りなさい」と言われて困ったそうだ。彼は妻の身を案じて必死に公安に食い下がり帯同することを認めさせたようだ、あっぱれ。
2日間の交流後、無事に釈放された2人は新疆へと向かった。予約していた国内線の航空券は破棄してしまったので、新たに航空券を買わなければならなかったそうだ。
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新疆ウイグルは美しい土地だった
「新疆ウイグルは素晴らしい土地だったよ」
そしてその後、2人は無事に結婚式を上げることができた。苦労をした新婚旅行の後でも友人は僕に「新疆ウイグルは素晴らしい土地だったよ」と話してくれた。自分の妻の出身地を大事にしたいという思いを感じられて僕はなんだか嬉しかった。
僕も写真を見せてもらったが、写真に写った新疆ウイグルはとても美しい場所だった。広大な自然や優しい笑顔を見せる人々、ぜひいつか訪れてみたいと感じた。
ただ、写真を見ながら僕はひとつだけ気になったことがある。それは…
スーパーマーケットに武装警官が何人もいたことだ。
あとがき
日本に帰って来た友人が「成田に着いた時の解放感が半端なかった…」と言っていた。笑い話として僕に話してくれたけど、事件が起きた時は本当に大変だったと思う。
生まれ育った国に感じる不安定さや不信感、それは中国という国の陰の部分なのだろう。今回の「海外滞在届の法律」についても、新疆在住の親戚は誰一人知らなかったようだ。そんな認知不足な中でも法律が施行されてしまうのが中国の現状だ。
もしもあなたが新疆に行くことがあったら、テロリストに間違えられないように行動に気を付けて欲しい。そしてもうひとつ、ウイグル族はイスラム宗派なので豚肉を食べるお店がほとんどないことも注意として付け加えておこう。
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